この世とあの世の境界
「黄泉比良坂(よもつひらさか)」をご存知だろうか。
古事記や日本神話に精通していなくても、日本神話を題材にした漫画やゲームで聞き覚えがある方もいるかもしれない(自分もそのクチ)。
国造りをしていたイザナギが、亡くなったイザナミを黄泉の国に迎えに行った際に、あの世とこの世の境界として描かれたのが黄泉比良坂。
変わり果てたイザナミに追われたイザナギが、黄泉比良坂を大岩(千引の岩)で塞ぎ、あの世とこの世が分かたれたという逸話だ。
興味がある方は、こちらのサイトがイラスト付きでとても分かりやすいのでおすすめ。
出雲旅行で、出雲大社以外にどこに行こうかと「出雲観光ガイド・観光マップ」の「出雲大社からの所要時間MAP(自家用車)」を眺めていた折、あの世の入口の名前を見つけてしまった。
まさかと思って調べてみたが、まさに神話の黄泉比良坂と比定される伊賦夜坂(いふやざか)という場所のようだ。
これは是非行ってみたいと思い、MAPの中でも一番手前にあるあの世の入口を最初に訪れることにした。
千引の岩
東出雲ICを降り、カーナビに従ってしばらく進むと「黄泉の国への入口」の看板が目に入り、気分が高まる。
そこから300メートルほど進むと、車が数台停められる駐車場に車が一台停まっていたので、その隣に車を停める。
車から降りるとちょうど先客が戻ってきて出て行き、その場にいるのは自分たちだけになった。 相当の穴場のようだ。
駐車場の看板を見ると、上述の日本神話に出てくる黄泉比良坂である説明の他、映画「瞬 またたき」のロケ地だったことも説明されていた。
主演の北川景子さんの演技の問題で映画の評価は低いようだが、河原れんさんの原作小説は感動作のようなのでまた読んでみたい。
駐車場沿いの小径を歩いて、注連縄をくぐると「神蹟黄泉比良坂伊賦夜坂伝説地」の石碑が鎮座し、その奥に岩がいくつか並んでいた。
どうやらこれがあの世とこの世を分かつ千引の岩のようだ。
「千人の人の力でようやく引けるような大きな岩」というには小さいので、元々あった岩が風化したのか、実物ではないのかは定かではないが、よくアニメやゲームに見られる、「一見すると何の変哲もない景色に見えるが、実はその先に道がある」のかもしれないと考えるとロマンが広がる。
岩を一周して観察したり、触ってみたりして当然そんなことはないことはすぐに分かったが、神話の世界に思いを馳せ、楽しむことができた。
塞の神様を探して
道を戻ると「この先塞の神」「この小道伊賦夜坂」の看板があり、折角なので行ってみることに。
木々に囲まれたなだらかな小径を進んでいくと、程なく三叉路に突き当たった。
正面の道は下り道。 右の道は獣道。 左の道は丸太で階段が設えられた上り道。
坂の神様というからには上の方だろうし、一番手が込んでいる左の道を進んでみることにした。
階段が急なので妻子を一旦その場に残し、ゼーゼー言いながら登っていくと。。。
「この先、行き止まり」の看板と共に道が途絶えていた。
ここまで足を伸ばすような人は中々いないだろうに、よくもこんな奥地に看板を建てたものだ。
看板によると先程の三叉路の右から左にかけて、古道が通っていたようだ。
どうせ行き止まりならもっと手前に看板を設置してよとブツブツ恨み言を言いながら、登ってきた坂道を降り三叉路まで戻ってきた。
となるとあとは正面の下り坂しかないと、またまた妻子を残して下り坂を下っていくと、住宅街に出てしまった。
どうやら反対側の入口だったようだ。
では塞の神様はどこだろうとまた三叉路に戻ると。。。
なんと三叉路の脇に小石が積まれていて、塞の神の立て札が立てられているのを発見。
それまで完全に見逃していたが、先程の三叉路の写真を改めてご覧頂きたい。
写真の左下の小石が実は塞の神(の一部)だったのね。 全く気づかなかった。
おかげで黄泉の国の入口である黄泉比良坂を上へ下へと走り回ってしまったのだが、これはこれで良い想い出になった。
塞の神様を拝み、汗を拭いながら黄泉比良坂を後にした。
次はマップ最寄りの「八重垣神社」へ。
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